東京・東中野の東京黎明アートルームへ初めて行ってきました。東中野の閑静な住宅地の一角にある、隠れ家のような、小ぢんまりとした感じの美術館です。他の美術館で東京黎明アートルームのパンフレットをもらうことがあったので、どんなところなのか興味を持ち、行ってみようと思ったのです。
東京黎明アートルームでは月ごとに企画展を開催していて、私が行った2017年6月の展示は「西湖勝覧図屏風 池大雅 & イロイロ肥前磁器」でした。
展示室は1階と2階にあり、私はまず2階の展示室から見て回ることにしました。2階の展示室には菱川師宣の絵と18-19世紀に朝鮮で作られた壺、宗教家・美術収集家の岡田茂吉の書が展示されています。菱川師宣の「伊勢物語図 初冠」と「布袋唐子図」は、代表作「見返り美人図」とは違った乙な味わいがありました。朝鮮で作られた「白磁壺」「青花龍文壺」はとにかく大きく、制作も保存も大変そうな感じです。岡田茂吉の作品は、書になじみのない私でもわかりやすい内容でした。
1階の展示室には、肥前磁器をはじめとする国産の陶磁器、アジア諸国の仏像、それに池大雅の作品がありました。
圧巻だったのは、やはり池大雅の「西湖勝覧図屏風」です。作品のサイズが大きいので、少し離れたところから全体像を眺めて、近くで見て細かな描写をじっくり見るという、2通りの楽しみ方ができました。
アジア諸国の仏像は、日本の仏像とはどこか違った、エキゾチックな雰囲気でした。仏像に囲まれた中にいると、厳粛で敬虔な気持ちにさせられます。古九谷様式、柿右衛門様式、鍋島焼といった肥前磁器は、作られた年代が下るにつれてデザインが洗練されていくような感じです。
同じスペースには常設展示の伊賀焼、信楽焼、仁清や乾山の作品などもあって、それぞれの個性が際立っていました。
東京黎明アートルームでの展示の特徴は、とにかく解説が丁寧なことです。素人にもわかるように易しい言葉使いで、難しい用語には必要に応じてルビを振ったり、カッコ書きで中期を付け加えたりしていました。より多くの人に来てもらい、美術に親しんでもらおうとする工夫がうかがえます。
アートルームを出た後は山手通りに出て、中野氷川神社へ行ってみることにしました。東中野は初めてなので、もう少し散策してみたいと思ったからです。山手通りを中野坂上の方向へしばらく歩くと、鳥居と参道が見えました。それなりに規模が大きく格式の高い神社のようです。
鳥居をくぐって境内を歩くと、左手に拝殿、右手に境内社がありました。拝殿は比較的新しい感じでしたが、旧中野村の総鎮守だったという風格が漂っていました。境内社は御嶽神社、北野神社、稲荷神社、塩竃神社などがあり、古い社殿と新しい賽銭箱が何とも対照的でした。このほか境内のあちこちに、大小・新旧さまざまな石碑がありました。中野氷川神社は、見どころがいろいろある神社だといえそうです。私が行った日は暑かったので、木々に囲まれた境内にいるだけでとにかくほっとしました。
さて神社には、山手通りとは違う方向にも鳥居がありました。どうやらこちらがもともとの参道のようです。鳥居をくぐって石段を下りると、また鳥居がありました。その先は石畳の参道です。参道の両側には並木があり、歩いていて気持ちが落ち着きました。参道の端にはさらに鳥居がありました。この鳥居が一の鳥居で、石段の下にあるのが二の鳥居、石段の上にあるのが三の鳥居ということになります。中野氷川神社がそれなりの格式を誇っていたことを、改めて実感できました。
一の鳥居に着いたら、右に曲がって山手通りに出て、東中野駅へ向かって歩きました。そして「知らない街を歩いてみて楽しかった」という余韻に浸りながら、電車に乗って帰りました。